北斎・写楽・広重・・・浮世絵の美、華やかに競演──大阪・滋賀で展覧会(4月21日)
- 2007/4/22
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葛飾北斎や東洲斎写楽、歌川広重ら浮世絵師の名品を紹介する展覧会が、
相次いで関西で開かれている。
江戸期の庶民の生活を華やかに伝える浮世絵の美を堪能する絶好の機会だ。
大阪市立美術館で開催中の「ギメ東洋美術館所蔵浮世絵名品展」
(5月27日まで)は、世界有数の浮世絵コレクションで有名な
フランス国立ギメ東洋美術館の収蔵品189点を公開している。
この東洋美術館はフランス人実業家エミール・ギメによって1889年に設立された。
19世紀末のフランスではジャポニスム(日本趣味)が花開き、
多くの浮世絵が海外に渡った。画商や収集家らがこぞって買い集めたが、
ギメはその1人だ。今回は里帰り展となり、作品選定に当たった
太田記念美術館(東京・渋谷)の永田生慈副館長は
「世界最高水準の作品で、保存状態も極めて良い」と語る。
最大の話題は、北斎の肉筆画「龍図」(ギメ所蔵)と「虎図(雨中の虎)」(太田所蔵)を並べて展示していること。
展覧会に先立つ作品調査で、この2点はもともと一対であったことが分かり、
約100年ぶりに「再会」した。雨の中、ほえる虎とカッと目を見開いた龍がにらみ合い、緊張感がみなぎっている。
関西ゆかりの作品として北斎の「摂州天満橋」が目を引く。
全国各地の有名な橋を描いた「諸国名橋奇覧」の1つで、モチーフは天神祭の夜の天満橋。橋は大きく湾曲し、人々であふれている。
祭りのにぎわいを大胆に表現していて、夏の生暖かい風と人いきれが伝わってきそうだ。
写楽の役者絵も見逃せない。
「嵐龍蔵の金貸石部金吉」は歌舞伎に取材し、袖をまくって借金を取り立てる金貸しの上半身を描いている。片目は見開き、もう片方は寄り目ですごんでいる姿は迫力満点だ。会場にはこのほか、喜多川歌麿や鈴木春信の美人画、勝川春英の相撲画など多彩な作品が並び、見どころがつきない。
日経ネット関西版【2007年4月21日】 (大阪・文化担当 関優子)
佐川美術館(滋賀県守山市)では、
「東海道・木曽街道 広重 二大街道浮世絵展」が5月27日まで催されている。
「東海道五拾三次」「木曽街道六拾九次」「近江八景」などから147点を展示。
旅人や各地の名勝が生き生きと描かれている。すべて貴重な初刷りをそろえている。
同館の井上英明学芸員によると、「広重はとりわけ雨と満月を描くのがうまかった」という。「中津川」は雨が直線で描かれ、かっぱを着込んだ3人組が歩いている。
ざあざあという、どちらかと言えば耳に心地よい雨だ。「須原」では雷鳴も聞こえてきそうな激しい雨の中、辻堂へ急ぐ人々が臨場感たっぷりに描かれている。
比較鑑賞すると、同じ雨でも変化に富んでいるのがよく分かる。
広重の作品はしんみりとした旅情を誘う。新幹線や飛行機がなかった時代。江戸の庶民は広重の風景画を眺めて旅へのあこがれを高ぶらせたに違いない。